英語のミニマルペア

ship と sheep は、なぜ同じように聞こえるのか

ある時、英語の発音を録音で聞いていて、二つの音が、曇りガラスの向こうに置かれた二つの小さな器物のように、互いに輪郭を重ねて見えることがあるのに気がつく。その一例が shipsheep である。

短い答え

一方は船であり、もう一方は羊である。海を渡るものと草を食むものとが、耳の中では、ただひとつの母音の違いに託されている。

文字で見れば shipisheepee とは別々の姿をしている。しかし実際に聞いてみると、日本語の耳にはどちらも「シ」に近い音として現れ、船と羊とは、しばらくの間、霧の中で同じ方角を指しているように感じられる。

英語では、この二つは別の母音として扱われる。

  • ship /ʃɪp/
  • sheep /ʃiːp/

短い文で聞くと、意味の差はいっそうはっきりする。

  • The ship is big.
  • The sheep is big.

文の形はほとんど同じであるにもかかわらず、聞き手の頭に浮かぶ景色はまったく違う。一つは大きな船体を海に浮かべ、もう一つは大きな羊を草地に立たせる。

この違いを、ただ長い音と短い音との違いとして片づけることもできる。たしかに sheep の母音は長く、ship の母音は短い。しかし、長さは現象の一部であって、全部ではない。

二つの母音の違い

口の中で起こっていることを、少しだけ分けて見るとよい。

sheep の母音では:

  • 音がやや長い
  • 舌が口の中の前の方へ寄る
  • 舌が少し高い位置に置かれる
  • 音に細い張りが生じる

ship の母音では:

  • 音が短い
  • 舌はそれより少し低い
  • 筋肉の張りがいくらかほどけている
  • 音の質が少し曇っている

糸をゆるく張った時と、少しだけ強く張った時とで、同じ糸でも鳴り方が変わるようなものである。

日本語の「イ」は、この二つのどちらにも完全には重ならない。したがって日本語を母語とする人が、この差を初めから聞き分けにくいのは、耳が鈍いからではない。

これまで日常の必要が、そのような細い物差しを耳に持たせなかったからである。

日本語話者が迷いやすい理由

川の石を見慣れた人が石の色や肌合いをすぐに見分けるように、音の違いも、使われる場に置かれてはじめて目盛りを得る。

顕微鏡を初めてのぞく時にも、似たことが起こる。視野の中には何かがある。しかし、それはただの薄い雲のようでもあり、汚れのようでもある。

焦点を少し動かし、光を少し弱めたり強めたりし、同じ標本を幾度か見るうちに、ぼんやりした面の中から境目が現れ、粒が現れ、今まで何もなかったと思われたところに秩序が見えてくる。

耳の場合にも、これと同じような調節があるらしい。

shipsheepsitseatbitbeatliveleavefillfeel などを続けて聞くと、初めはどの組も似たような二つの音として通り過ぎる。

ところが何度か聞いているうちに、ある音は少し前へ出て張り、別の音は少し後ろへ退いてゆるむことが分かってくる。これは単語を覚えるというより、音の表面に斜めから光を当てて、その凹凸を見ることに近い。

発音より先に聞く

発音する時にも同じ事情がある。sheep を言おうとして、日本語の「シー」をただ長く引き伸ばしても、必ずしも英語の sheep にはならない。

ship を言おうとして、それを急に短く切っても、やはり十分ではない。問題は時間だけでなく、舌の位置と、口の中の張力の配分にある。

小さな音であっても、身体の中では案外多くの部分が関係している。

このような差は、日常会話の中ではあまりにも短い時間に起こるので、取り立てて考えるほどのものではないように見える。しかし、意味の側から見ると、そこにははっきりした境がある。

その境を取り出して見るために、英語学習では minimal pairs、つまり一つの音だけが違う単語の組をよく使う。

  • ship / sheep
  • bit / beat
  • sit / seat
  • full / fool

会話の流れの中では隠れてしまう違いを、二つ並べて聞くことで、耳は少しずつ別の中心を見つけていく。

耳の練習のしかた

この小さな母音の差を、何か重大な試験のように考える必要はない。むしろ、ありふれた自然現象の一つとして眺めてみる方がよい。

水面に落ちた二つの石の波紋が、初めは重なって見えながら、よく見れば少しずつ中心を異にしているように、shipsheep もまた、口の中に別々の中心を持っている。

練習は単純でよい。

  1. 近い二つの英単語を聞く
  2. どちらの語だったかを選ぶ
  3. すぐに答えを確かめる
  4. 同じ対比を何度も聞く

耳は、あとから細かくなる。夜空を見上げた時、初めはどの星も同じ白い点のように見える。しばらく眺めていると、ある星はわずかに赤く、ある星は青白く、またある星は頼りなくまたたいていることに気づく。

空が変わったのではない。こちらの目が、少しずつ暗さに慣れたのである。

音の違いは、聞いてみると少しずつ見えてくる。

この対比を練習する

Soundwiseでこの音の違いを練習する

Soundwiseは、英語のミニマルペアを使って耳を鍛えるリスニング練習アプリである。

近い英単語を聞き、どちらに聞こえたかを選び、すぐに答えを確かめる。短い練習の中で、英語の音の境目を少しずつ見つけていく。

目的は、発音理論を暗記することではない。まず耳が、英語で意味を分ける音の違いを認識しやすくなることである。

Soundwiseでこの音の違いを練習する

FAQ

多くの場合、両方がつながっています。

ただし、耳が二つの音を別のものとして聞けるようになると、発音の調整も考えやすくなります。

はい。

大人の耳も、新しい音の区別を学ぶことができます。ただし、説明を一度読むだけでなく、焦点をしぼった反復が必要になることがあります。

英語話者は、幼いころから /ɪ/ と /iː/ を別の母音カテゴリーとして聞く経験を重ねているからです。

自動的に見える区別も、長い接触の中で作られたものです。

ミニマルペアとは、一つの音だけが違う単語の組です。

ship / sheep、sit / seat、bit / beat などは、英語の母音の違いをはっきり取り出して聞くために使われます。

日本語の「イ」は英語の /ɪ/ と /iː/ のどちらにも完全には重なりません。

そのため、最初は shipsheep が同じ音の範囲に入って聞こえることがあります。

shipsheepsitseatbitbeat のような近い単語を聞き比べ、どちらの語だったかを選び、すぐに答えを確認します。

発音を急ぐ前に、耳が違いを見つける時間を作ることが大切です。